土屋仁応 新作彫刻展
2015.1.9(金) - 2.7(土)
11:00 - 19:00 日・月・祝 休廊
竜(部分), 2014, 80 x 49 x 30cm, 楠•ボロシリケイトガラス•彩色 撮影 : 竹之内祐幸
この度メグミオギタギャラリーでは第4回目となる、木彫家、土屋仁応の新作個展を開催致します。
土屋仁応(b.1977)は東京藝術大学で彫刻を学び、2007年に同大学大学院にて保存修復彫刻の博士課程を修了しました。土屋は伝統的な仏像彫刻の技法と、素材の質を丸ごと取り去ってしまうような独自の彩色を用い、静謐で神秘的な動植物をモチーフとした彫刻作品を制作し続けています。
2014年には香港クリスティーズギャラリーでのグループ展に参加、2015年にはオランダでの個展開催が決定する等、近年国内外で大きな注目を集めています。
作品は小川洋子著『人質の朗読会』(中央公論新社)、辻村美月著『ツナグ』の中国翻訳版(人民文学出版社)等、多数の文学作品の表紙に起用されており、美術界のみならず文学界においても、その芸術性の高さが認められている作家でもあります。
今個展で土屋仁応は、竜、人間、狐、猫の4点の新作を披露します。
「以前、山間の川の近くの家をアトリエにしていました。小さな川でしたが、大雨が降ると一気に増水しました。小さな家など簡単に流されてしまいそうで、雨のたびにびくびくしていました。激しい濁流は、暴れ回る竜のようでした。しかし大雨が止んだ翌日、木々は潤い、山は青々と輝きました。
雨はすべてを押し流す恐ろしい力を持つと同時に、すべての命の源なのだと実感しました。
そんな水のイメージを具現化したものとして、竜をつくってみたいと思いました。」
「樟の木の繊維は、ねじれながら成長します。そのせいで樟の木は粘り強い木材になります。
ねじれながら立つ、という姿は、調和を保ちながら活動する生命を象徴するポーズのように思います。
このポーズを、人の形で現してみたいと思いました。」
木という素材を扱い、自らも自然の中に身を置き制作活動を続ける土屋は、自然の持つ大きな力に対する人間の営みの脆さを肌で感じています。だからこそ自然や私たちを取り巻く環境に翻弄されるだけではなく、そういった力に対してバランスを保とうとする力の存在を信じているといいます。
その言葉通り、我々は土屋の木彫作品から、荒々しさや神々しさに顕される人智を超えた畏れと、静謐さや温もりに顕われる生の喜びが同居し、ひとつの生命として調和しているのを感じ取ることができます。
また、土屋の木彫作品の大きな個性のひとつである眼について、これまで土屋は水晶を玉眼として使用することで見る角度によって視線が変化するような焦点のない瞳を表現してきました。
今展で土屋はガラス作家・田中福男氏の協力のもと、透明度の高いボロシリケイトガラス製の玉眼を制作、使用することで瞳のなかに白眼・虹彩・瞳孔をつくり「見つめている」瞳を表現しています。
こちらを見るだけでなく、応えようとする気持ちを眼に表した、無口だけれど饒舌な生き物の生き生きとした表情が、観る者の心により迫ってくることでしょう。
今展では、2014年9月に京都で開催された人間国宝である染織家、志村ふくみ氏と志村洋子氏とのコラボレーション展「しむらのいろmeets土屋仁応」の一部を再現した展示も披露します。
土屋は、着物糸の染色に使用されたものと同じイチイの木を使って制作した鳳を披露します。
志村氏による生命感ある柔らかな染織の世界と、土屋作品のコラボレーションをお楽しみ下さい。
約2年ぶりとなる土屋仁応個展に何卒ご期待下さい。