top of page

ホリー・ファレル / Holly Farrell
2016. 6.17(Fri.) - 7.2(Sat.)

11:00 - 19:00(closed on Mon., Sun. & Public Holiday)

 

Reception 6.17(Fri.) 17:30 - 19:30


Doll and Book Paintings

Cookbooks2C2020162C20Holly20Farrell.jpg

"Cook books" 2016, 35.56×50.8cm, oil and acrylic on masonite

"Medical books" 2016, 35.56×50.8cm, oil and acrylic on masonite

"Tammy" 2013, 50.8×45.7cm, oil and acrylic on masonite

MEGUMI OGITA GALLERY 東京都中央区銀座2-16-12銀座大塚ビルB1

この度メグミオギタギャラリーでは約4年ぶりとなるホリー・ファレルの個展を開催します。

 ホリー・ファレルは1961年カナダのオンタリオ、ノースベイで生まれました。日々の生活のストレスを解消する為に絵を描き始め、自分自身の技法を独学で身につけたホリーは1995年より本格的に画家としての活動を開始し、現在に至るまで世界中で精力的に発表を続けています。
作品はBank of Montreal, the Louise-Dreyfus Family Collection, Sony Music Japan等にコレクションされています。

 ホリーがモチーフとして描くのは日常生活の中で人間と共に歳月を重ねてきた本や人形、生活道具などです。アクリルと油彩の混合技法を使い、使い古した物を筆のタッチで表現することで、写真とは異なるリアルな物の存在感を浮かび上がらせます。何気ない日常の中で使われ、傷ついた「物」たちは、彼女の手を通して、経験を積んだ人間のような表情を垣間見せます。

  今展では彼女の代表シリーズであるBookから、子どものための本、料理本、医療本とい う、どれも私たちの身近にありながら各々異なる個性の光る最新作を3点と、1960年代にアメリカで人気を博し、バービーにはない愛らしい親しみやすさから日本でも未だに根強いファンを持つ着せ替え人形タミーのシリーズを中心に、約8点の絵画を披露します。  

 「物」が持つそれぞれにユニークな歴史を表情豊かに物語る、ホリー・ファレルの絵画に是非ご期待下さい。

<Bookシリーズについて>
 読書はわたしにとって孤独な活動だった - 本を読みきかせてもらった記憶はないけれど、常に本を読んでいたことはよく覚えている。幼少期の私にとっての本とは、アルコール中毒の父に支配される大家族の無秩序な生活からの逃避手段だった。
 現実に対しあまりにも無力だと感じるときでも、読書をしているときだけは空想の中で気持ちを強く持つことができた。現実に起る父の怒りや暴力とは正反対の希望と冒険の物語のおかげで、10才のとき父が亡くなるまで、わたしはなんとかこの世界を生き延びることができた。
 もし彼の存在がなかったとしたら、果たして私は今ほど読書に熱中するようになっただろうか。

 私のブックシリーズの一番最初の絵は、子ども時代に読んだ本を描いたものだ。特にお気に入りだったハンス・ブリンカーの物語にハイジ、それから赤毛のアン、黒馬物語、ボブシーきょうだい探偵団、、
 破れ、シミがつき、ボロボロになり、ページの折れた、少なくともひとりの人間の愛着をくぐり抜けてきたことがわかる本が好きだ。

 わたしはいつも自分にとってなじみ深いものに惹き付けられる。クックブックスとガーデニングブックスは、料理と園芸に没頭する母を見つめていた子どもの頃の日々と密接に結びついている — どんなに生活が大変なときでも母は、家族のために食事を作り、庭に花を植える手間を惜しむことはなかった。

 メディカルブックは他の絵画に比べて、くすんだ色合いが眼をひく作品だ。この作品はわたしに、ある小さな町医者への穏やかな信頼の情を呼び起こす。クリスマスイブの日、仕事からの帰り道、わたしの肺炎の発作がよくなったか確かめるためだけにわざわざ立ち寄ってくれた医者のことを。このシリーズも、他の作品と同じ様にノスタルジアがルーツになっている。

 良いときも、そうでないときも、本は私を励まし続けてくれた。
物語にまつわる記憶の方が、物語そのものよりも鮮烈なときがある - 副産物としての鮮明な想像力や、現実逃避への強い衝動。
 本が知識の源であり経験の前身だと確信を持って受け入れられていた時代に育った事を嬉しく思う。
 小さな町に生まれ育ち、コンピューターがまだファンタジーだった時代に、本が世界への扉を開いてくれたことを、私は喜びたい。

bottom of page